飲み物は得られなかったし、両親のあんな会話を聞いてしまったしで、わたしが寝付けないことには変わりない。

 豆電球が細やかに照らす、六畳ほどの部屋。
 見渡しても、なんの息抜きにもなりはしないから、わたしは枕元のスマホをタップした。

「海……」

 だけどスマホなんて、外の明るい世界とリンクしてしまうものになんて触れなければよかったと後悔したのは、それからすぐのことだった。

『今日海行ってきたよ!超楽しかった!今度みんなで行こ〜!』

 元気はつらつとした陽気な声が、今にも立体的な吹き出しで、画面から飛び出てきそうだった。

『え!まじで!?わたしも今日プール行ってきたんだ!夏休み限定で学生割引してたから超安いよ!今度行ける人たちで行こ!』

 スクロールもしていないのに、上へ上へとその画面が流れていくのは、リアルタイムで既読をつけた人たちが、オーケースタンプやイイねスタンプで反応するから。

 夏休みの夜更かしをみんな満喫しているのが、ひしひしと伝わってくる。

『いいじゃん!行こう行こう!みんなの予定合わそうぜ〜!』
『わたし、塾の夏期講習以外なら大体ひまじん〜』
『俺もお盆以外は、特に予定なし!』
『ちょっとみんな、ウケんだけど!既読つけんのはっや!うちのクラスほぼほぼ起きてんじゃん!』

 シュポッシュポッ シュポッシュポッ

 マナーモード設定にすることをうっかり忘れていたスマホが、まるでばかのひとつ覚えの如く、同じ音を連発する。

 シュポッシュポッ シュポッシュポッ

 一通のメッセージに対して、一回ずつ鳴るその音が、わたしに鬱憤(うっぷん)を溜まらせていく。

 なんなのよ、みんな……わたしがこのグループにいるってわかってて、どうしてこんなメッセージが送れるの……?