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「そうか……やっぱり今回も、アメリカでの手術を勧められたか……」
「早いところ手術を受けないと、本当に命が危ないって先生に言われたわ。このままじゃ、迫る死を待つだけだって」
「それは、和子もいる前で言われたのか?」
「ううん。和子にはお会計が混んでるってことにして、裕一くんと表に出てもらった隙に、診察室にわたしだけが戻って聞いたの」
「そうか……」

 お父さんとお母さんのそんな会話は、暗がりの廊下で意図せずとも聞いてしまった。

 病院から帰ってきたその日の、深夜0時過ぎのこと。
 帰りのバス車内で寝てしまったこともあってか、思うように寝付けなかったわたしは、なにか飲み物でも飲んで気を紛らわせようと、キッチンへ向かおうとしていたんだ。

 だけどキッチンへと続くリビングへ入ろうと、ドアノブに手をかけたその瞬間、わたしの身体は金縛りにあったように動けなくなってしまった。

「もう無理やりにでも、和子をアメリカに連れて行くしかないのかな……」
「でも、そんなことしたらあの子、また反発しちゃうわ。昨日だってテレビに花瓶を投げつけていたし、最近また一段と、心のバランスが取れなくなってきているみたい」
「じゃあ、どうしろって言うんだよ。このまま指を咥えて見ているしか、僕たちにはできないって言うのか?」
「そうじゃないけど……でも、強硬手段に出るのは違うと思うって話。なにか別の方法で、どうにかあの子の気持ちを動かさないと」
「だったら説得するしかないってことだな」
「説得?」
「明日にでも、和子にアメリカに行くことを強く促そう。それで一刻も早く、日本を発つんだ」