帰りのバス車内。
一番後ろの座席で、お母さん、ユーイチ、わたしの順で並んで座った。
うとうとと、舟を漕ぎかけたわたしに、ユーイチが自身の肩を叩いて言う。
「頭、乗せれば?」
「え?」
「まだ停留所に着くまでは時間あるし、ちょっと寝ていきなよ」
眠ることは大嫌い。だって目覚める保証なんてどこにもないから。
だけど繰り返し、波のように襲ってくる睡魔に勝つことはできずに、わたしは大人しくユーイチの肩を借りることにした。
「ありがと……バス停着いたら起こして……」
「おう」
「おやすみ……」
「ん。おやすみ」
まぶたを閉じ、寝入る準備を進めるわたし。
けれど光を閉ざした真っ暗な世界が目の前に広がれば、なんだか心許なくなってしまい、なかなか上手に落ちてはいけない夢の中。
それでもまぶたを開ける気にはなれず、そのまましばらく、ユーイチの肩を枕に揺られていると。
「ちょっといいっすか、和子の母さん」
と、やけに深刻なユーイチの声がした。
「なあに?」と聞くお母さん。「あの」と切り出すユーイチ。
わたしは現実世界と夢の狭間。微睡むまで、あと少し。
「和子のやつ、やっぱりあの部分だけ記憶すっぽり抜けちゃってるんすね……ちーちゃんのことも俺の父さんのことも、和子はまだ──」
と、そこまでを耳にして、わたしの意識はぷつんと途切れた。
一番後ろの座席で、お母さん、ユーイチ、わたしの順で並んで座った。
うとうとと、舟を漕ぎかけたわたしに、ユーイチが自身の肩を叩いて言う。
「頭、乗せれば?」
「え?」
「まだ停留所に着くまでは時間あるし、ちょっと寝ていきなよ」
眠ることは大嫌い。だって目覚める保証なんてどこにもないから。
だけど繰り返し、波のように襲ってくる睡魔に勝つことはできずに、わたしは大人しくユーイチの肩を借りることにした。
「ありがと……バス停着いたら起こして……」
「おう」
「おやすみ……」
「ん。おやすみ」
まぶたを閉じ、寝入る準備を進めるわたし。
けれど光を閉ざした真っ暗な世界が目の前に広がれば、なんだか心許なくなってしまい、なかなか上手に落ちてはいけない夢の中。
それでもまぶたを開ける気にはなれず、そのまましばらく、ユーイチの肩を枕に揺られていると。
「ちょっといいっすか、和子の母さん」
と、やけに深刻なユーイチの声がした。
「なあに?」と聞くお母さん。「あの」と切り出すユーイチ。
わたしは現実世界と夢の狭間。微睡むまで、あと少し。
「和子のやつ、やっぱりあの部分だけ記憶すっぽり抜けちゃってるんすね……ちーちゃんのことも俺の父さんのことも、和子はまだ──」
と、そこまでを耳にして、わたしの意識はぷつんと途切れた。