家に帰る頃、空は茜色。

 お母さんは、ユーイチのお母さんから全てを電話で聞いていたようで、わたしと顔を合わせるやいなや、「今まで黙っててごめんね」と言ってきた。

「和子が自然に思い出すほうが、ショックが少ないだろうと思って……」
「ん〜。どっちにしろ、ショックだったとは思うけど」
「そうよね」

 ユーイチのお父さんの死に続いて知った、ちーちゃんの死。

 ふたりが十年も前に亡くなっていたことを告げ知らされた今のわたしも辛いけれど、でも、これまでそれを隠し続けてくれた方も、とても辛かっただろうなと思った。

 うそをつくことに、時には胸を痛めただろう。

 特にユーイチには、これまでたくさんちーちゃんの話題を振っちゃっていたし、その度心に傷を負わせていたかもしれない。

「ユーイチは、強いなあ……」

 幼い頃にお父さんを亡くしたのに、それをわたしに勘付かせないほど、彼はいつも、わたしの前で明るく振る舞ってくれていた。

 そんなところも好き、としみじみ感じて、わたしはお父さんが仕事から帰ってきたタイミングで、宣言した。

「わたし、アメリカに行く。行って、必ず心臓を治してくる」

 10パーセントなんかに、わたしは負けない。
 これは、わたしの人生だ。わたし以外に、この『人生』という物語の主役は務まらない。