めそめそと、泣き続けているわたしの前でしゃがみ込んだユーイチは、わたしをそっと抱きしめた。

「ちーちゃんが、嬉しそうに手術の話をしていたのも、覚えてない?」

 その問いに、わたしはふるふると首を横に振った。なにも思い出せない、なにも記憶にない。ちーちゃんが死んじゃった前後のことは。

 そっか、と小さく言って、ユーイチはこう続ける。

「ちーちゃんが受けようとしてた手術は、けっこう大掛かりなやつで、七歳になったばかりの子の身体が耐えられるかどうかって不安があったらしいんだ。だけどちーちゃんは、受けたいって言った。病気を絶対に治したいからって。これは、あとから聞いた話なんだけど、その時のちーちゃんはもう余命を宣告されてたらしいんだ。このまま手術を受けなかったら、年を越せるかわからないって」

 今のわたしと、似たような境遇。

 十七歳の高校生だって打ちひしがれてしまう酷な言葉を、ちーちゃんは小学一年生にして言われていたんだ。

 チリンと鈴が鳴った。風も吹いていないのに。

「和子がいない時、ちーちゃんが俺にこっそり話してきたこと、聞きたい?」

 その問いには、大きく首を縦に振った。
 大好きなちーちゃんの死を、わたしが段々と受け入れ始めたのは、穏やかに過去を語るユーイチのお陰かもしれない。

 わたしを抱きしめていた腕を離し、目の前で見せられるわたしのスマホ。そこにつけられているお守りを、ユーイチは指さした。

「これ実は、タイムカプセルなんだってよ。十年後への和子に宛てて書いた手紙が、こん中入ってんだってさ」