.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
「あ……ん、どうー、け……」
三つの漢字が、上手に読めなかった。
「あん、どー……け」
どうやら目から入ってくる情報を、脳みそが理解するのを拒んでいるようで、だからそれに伴って、唇の動きも鈍くなっているようだった。
「あ……んど……うけ……」
安藤家
目の前に佇む墓石には、そう書かれていた。一瞬先ほどの霊園に戻って来たのかと思ったけれど、そうじゃなかった。
わけが、わからない。
「なに、ここ……」
ユーイチに連れて来られた目的地に、浮かれ気分は急降下。
ちーちゃんの苗字は安藤だけれど、だからってなんでどこかの安藤さんのお墓の前にいなければいけないんだ。
わたしの隣でしゃがみ込んだユーイチが、目を瞑って手を合わせたから、ゾッとした。
「ちょっとユーイチ、ふざけないでよっ」
起き上がらせようと、ユーイチの腕を掴んで引っ張る。けれどそれをもろともせず、彼はしゃがんだままに目だけを開けた。
「和子」
とても低い声だった。
「お前が俺の父さんの死を知らなかったのは、十年前にあった辛い出来事に全て、自分で蓋をしたからだ」
ユーイチは、わたしのことは見なかった。目の前の墓石に、視線を送り続けている。
「十年前の今日、ちーちゃんは七歳になると同時に手術を受けるはずだった。だけどその前日に発作を起こして、手術は受けられなくなった」
そこでゆっくりと、わたしに向けられるその視線。
わたしの影が落とされた、暗がりの顔でユーイチは言う。
「ちーちゃんはもうとっくに死んでんだよ、和子。お前がちーちゃんに誕生日プレゼントを直接あげたいって固執するのも、十年前に渡すはずだったプレゼントを……ちーちゃんのために用意してた文房具セットを渡せなかったからだ」
「あ……ん、どうー、け……」
三つの漢字が、上手に読めなかった。
「あん、どー……け」
どうやら目から入ってくる情報を、脳みそが理解するのを拒んでいるようで、だからそれに伴って、唇の動きも鈍くなっているようだった。
「あ……んど……うけ……」
安藤家
目の前に佇む墓石には、そう書かれていた。一瞬先ほどの霊園に戻って来たのかと思ったけれど、そうじゃなかった。
わけが、わからない。
「なに、ここ……」
ユーイチに連れて来られた目的地に、浮かれ気分は急降下。
ちーちゃんの苗字は安藤だけれど、だからってなんでどこかの安藤さんのお墓の前にいなければいけないんだ。
わたしの隣でしゃがみ込んだユーイチが、目を瞑って手を合わせたから、ゾッとした。
「ちょっとユーイチ、ふざけないでよっ」
起き上がらせようと、ユーイチの腕を掴んで引っ張る。けれどそれをもろともせず、彼はしゃがんだままに目だけを開けた。
「和子」
とても低い声だった。
「お前が俺の父さんの死を知らなかったのは、十年前にあった辛い出来事に全て、自分で蓋をしたからだ」
ユーイチは、わたしのことは見なかった。目の前の墓石に、視線を送り続けている。
「十年前の今日、ちーちゃんは七歳になると同時に手術を受けるはずだった。だけどその前日に発作を起こして、手術は受けられなくなった」
そこでゆっくりと、わたしに向けられるその視線。
わたしの影が落とされた、暗がりの顔でユーイチは言う。
「ちーちゃんはもうとっくに死んでんだよ、和子。お前がちーちゃんに誕生日プレゼントを直接あげたいって固執するのも、十年前に渡すはずだったプレゼントを……ちーちゃんのために用意してた文房具セットを渡せなかったからだ」