なにかを秘めているふたりを、訝しむ。

 突っ込んで聞いていいものかと迷っていると、あの名前が飛んできた。

「じゃあ、千尋ちゃんのことも話してないのね?」

 千尋ちゃんとは、ちーちゃんのことで間違いなし。
 その名前が耳に入れば、わたしは全身毛羽だった。

「ち、ちーちゃんにもなにかあったんですか!?」

 テーブルに両手のひらを打ちつけ立ち上がり、出したわたしの大声が、静かな店内に響き渡る。

 この十年間、海外にいると思い込んでいたユーイチのお父さんは亡くなっていた。
 ならばこの十年間、一度も会えていないちーちゃんにも不安が募った。

 いや、なにを怯えてるのよわたしっ。ちーちゃんとは電話をしょっちゅうしてるんだし、平気に決まってるでしょっ。

 ドクドクと、嫌な鼓動が耳を突く。
 場違いな態度を反省し、静かに座る。

「す、すみません……なんでも、ないです……」

 ドクドクドクドク

 ちーちゃんに、会いたいと思った。

 それからざる蕎麦を食べ終わるまで、わたしはひとことも喋らなかった。

 途中、ユーイチのお母さんが席を立ち、どこかに電話をかけていた。
 席へ戻ってきた彼女の合図を受けて、わたしはユーイチに肩を叩かれる。

「今からちーちゃんに、会いに行くか」