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「ただいま……」
「おかえり、和子。遅かったのねえ」
「ん……」

 海から帰宅する頃にはもう、夜空から星が落ちきったあとだった。

 光る星屑を使って建造物を作ったから、東京の街は夜でも明るいのよ、と昔おばあちゃんは教えてくれたけれど、俯き、足の爪先ばかりを眺めて帰っていては、輝く街も星なき空も見えやしない。

 今日は普段よりも一層、気持ちが落ち着かない一日だった。

 ユーイチのお父さんの死について、これまで両親からひとことも聞いたことがなかったのは、一体どうしてなんだろう。

「おかえり、和子。裕一くんと海に行ってたんだって?」

 ちょうど、お風呂から出てきたお父さんが、首にタオルをかけながらリビングへと入ってきた。

 夕飯は外で食べてくるからいらないと、お母さんに連絡を入れた時に伝えたわたしの居場所。

 飲み物を飲もうと帰宅後に開けた冷蔵庫の中には、ラップのかけられたおかずがあったけれど、「もっと早くに連絡を入れなさい」とか、「もう和子のぶんも作っちゃったのに」とか、そういったことは言われない。

「うん、行ってたよ」
「どこの海へ行ったんだい?」
「えっとねえ、銚子ってとこ」
「そんなところまで行ってたのか。千葉だったら、稲毛(いなげ)海岸のほうが近いのに」
「それ、わたしもちょっと思ったけど。ユーイチが銚子にしようって言ったから」
「ふうん」

 行きは不思議に感じたけれど、今ならわかることがある。

 東京湾沿いに面している海岸ではなくて、ユーイチはユーイチのお父さんがいる太平洋側に、行きたかったんだろうなって。