禄輪は首をめぐらせて、薫に向かって小さくて招きをした。
無言で立ち上がった薫は「ちょっと行ってくる」と言い残して禄輪と共に教室を出ていく。
「禄輪先生どしたのかな〜?」
「さぁ……薫だけ連れてったけど」
「まあ薫って禄輪先生の愛弟子だもんなぁ────っと、出来たよ嬉々」
バサバサとゴミ袋ケープを脱いだ嬉々。
顎のラインで揃えられた髪を手櫛で撫で付け、「阿呆の割にはよくやった」と褒めているのか微妙なラインの賛辞を送る。
「急がねぇと。あと五分で17時だぞ!」
「ここ片付けとくから行っといでよ。終わったら俺先帰るね」
「わりぃ、頼んだ!」
ドタバタと教室を出ていった二人を見送り、嬉々が脱ぎ捨てたゴミ袋を拾い上げる。
教室を見渡した。大型ストーブの火がごうごうと燃える音だけが響く。
がらんとした教室に何故か胸がざわついた。