雨降って、地固まる。
 泥にまみれた世界の中でも僕らは笑う。

 永遠なんて、きっとない。
 だけど永遠を信じていたい。
 たとえ関係性が複雑に絡まってしまっても。
 心の距離が離れても。


「ねえ、一青」


 僕が、君のことを覚えている限り。


「お腹すいたね」
「あー、分かる」
「お昼、何食べる?」
「はあ? そんなん一択だろ」

 赤く腫れた目尻を見せないよう、恥ずかしそうに顔を逸らし、僕の友達は当然のように言い放った。

「オヤジのラーメン」
「〝大将って呼べ〟!」
「うわっ、似てんじゃん!」
「でしょ、あははは!」

 顔を見合わせ、昔と同じ顔で笑った僕ら。
 ようやく泥から顔を出した二人の声は、優しい波音の隙間にしばし心地よく響き、やがて、海から遠く離れていった。


〈完〉