読みながら、私は声を出して泣いていた。

 ──ばいばい。

 初めて大ちゃんに言われた、次に繋がることのない、終わりを意味する言葉。
 大好きな大ちゃんの、大好きな大好きな〝またね〟は、もう聞けない。

 返信、するべきだろうか。してもいいだろうか。
 私も伝えたいことがある。最後なのだから、ちゃんと伝えなければいけない。
 震える指先をメッセージの入力欄に置く。

 ──俺にとって初恋だった。
 私にとっても初恋だったよ。

 ──本当に、菜摘が好きだったよ。
 私も本当に好きだったよ。すごくすごく、大好きだったよ。

 ──ばいばい、菜摘。
 ばいばい、大ちゃん。

 文章は頭にはっきりと浮かんでいるのに、指が凍ったみたいに動かなかった。
 だって私は、きっと引き留めてしまう。気持ちが溢れてしまう。
 だって私は、過去形になんか書けそうにない。
 大ちゃんと過ごした日々も、大ちゃんへの想いも、全部全部、とても過去になんかできない。

 メッセージの入力欄から指先を離し、大ちゃんからのメッセージが表示されたままのスマホを両手でぎゅっと握りしめた。

「──大好きだよ、大ちゃん」

 まだ、過去にしなくてもいいだろうか。
 ちゃんと心の整理ができるまで、この気持ちを抱えたまま過ごしてもいいだろうか。
 大ちゃんと過ごした日々の記憶を、大切にしてもいいだろうか。
 またいつか、偶然でも、大ちゃんと会える日を夢見てもいいだろうか。
 その頃には過去にできていたら、私の想いを伝えてもいいだろうか。

〝今まで本当にありがとう〟
〝世界で一番愛してた〟
〝だから、さようなら〟