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 大ちゃんの〝お願い〟は至って簡単で、少し不思議なものだった。

 ──一緒に海行こう。

 なにを言われてもいいよう覚悟していたのに、予想していたどれとも違う内容に驚いて、私はとんでもないアホ面をしてしまった。
 訊きたいことは山ほどあるけれど、訊かなかった。どうせなにも言ってくれないから。

「いいよ」とだけ返すと、大ちゃんは「よかった」と微笑んだ。
「来週の休みに連絡する」と言った大ちゃんに、「わかった」と答える。

「ほんとにわかってんのかよ」と笑う大ちゃんが好き。
 わからないよ。なにもわからない。
 どうしてそんなに寂しそうな目をしているのかも、それでも優しい手の意味も。

 だけど、大丈夫。ちゃんとわかっている。
「ほんとにわかってんのかよ」の意味も、ふたりの未来も、この二年間の結末も。

 ──わかった。待ってるね。