ホテルに入ると、大ちゃんはすぐに私をベッドに押し倒した。
私はいつだって矛盾だらけだ。
大ちゃんのことは諦めたい。だけど、諦めたくない。他の人を好きになりたい。だけど、大ちゃん以外の人を好きになりたくない。諦められないのではなく、他の誰かを好きになれないのではなく、私の本心はそうだった気がする。
大ちゃんを信じたい、彼女と別れたって言ってほしい、というのは本心だった。だけど同じくらい、大ちゃんと私は結ばれないと思っていた気がする。
だから好きだと言われても不安が拭い切れなくて、会うたびに、これが最後になるかもしれないと心のどこかで覚悟しようとしていた気がする。いつ終わりを迎えるかわからないと、心のどこかで感じていた気がする。
大ちゃんの無神経さに腹が立ったのに、本気で怒っていたのに、朝まで一緒にいられることを嬉しく思ってしまっている。
行く場所なんかわかっていたのに、それでも私は傷ついている。大ちゃんの家に連れていってくれたら少しは自信がついたかもしれないのに、ほんのささやかな期待すら打ち砕かれてしまったな、と。
全部全部、矛盾にも程がある。
大ちゃんと出会ってからの私は、なにもかもが矛盾だらけだ。
「菜摘」
時折名前を呼ぶ声が、余計に胸を締めつける。
ずるいなあと、何度でも思うのに。
大ちゃんが一瞬でも、ほんの一瞬でも、私だけを見てくれるのなら、なんでもいいと思ってしまっていた。
一瞬の儚い夢を、永遠に見ていたいと、思ってしまっていた。