その日の放課後、生徒指導室を通りかかると、中から意外な人が出てきた。

「駿くん?」

 もう金髪じゃない駿くんはちょっとわかりにくい。

「おう菜摘。また悪いことしたのか」
「してないよ。たまたま通りかかっただけ。駿くんこそなにやらかしたの」
「進路相談だよ」

 駿くんは成績優秀らしく、仲間内では数少ない大学進学組だそうだ。黒髪にしたのも受験のためだと聞いた。

「そうなんだ。大ちゃんは?」

 あっけらかんと言った私を見て、駿くんが噴き出した。
 どうして笑われたのかわからなくて首をひねる。

「気になる? 山岸」
「え? ち、違うよ。だっていつも一緒にいるから、今日は一緒じゃないのかなって思っただけで」
「俺の進路相談に山岸がついてくるわけねえだろ」

 当たり前のことを笑いながら言われて、体が沸騰したみたいだった。
 理緒にばれて、駿くんにもばれて、私はちっとも隠せていない。
 駿くんはふうと息を吐くと、腕を組んで壁に寄りかかった。

「山岸さ、最近あんまり学校来てねえんだよ」
「そうなの?」

 確かに最近あまり会っていない。学年が違うわけだから会わない時は会わないし、そこまで気にすることではないと思っていた。まさか学校に来ていないなんて。

「なんで来ないの? なんか聞いてないの?」
「山岸が正直に言うと思う?」

 言葉に詰まった。
 駿くんの言う通りだ。訊いたところで、大ちゃんはきっとはぐらかす。

「菜摘も理由知らないんだ」
「うん……」
「まあ、山岸に会ったら普通に接してやってよ。なんかあったんだと思うから」

 駿くんはそう言って去っていった。
 大ちゃん、どうしたんだろう。