大ちゃんと音信不通になってすぐに合格発表があり、私と伊織、そして隆志も第一志望に合格した。猛勉強した甲斐があったと素直に嬉しかったし、やっと受験勉強から解放されることに心の底からほっとした。

 先週届いたばかりの制服に袖を通す。中学はセーラー服だったから、ブレザーはすごく新鮮だ。可愛いと人気のチェックのプリーツスカートを何度か折って、スカートと同じ柄のネクタイを緩く結んだ。

「今日から高校生か」

 本当に受かったんだ。大ちゃんと同じ高校に。
 手放しで喜べない状況になってしまっていることは、かなり複雑ではある。入学する頃には関係性が変わっていたらいいな、なんて淡い期待を抱いていたのに、期待とは正反対の結果になってしまっているのだ。

 大ちゃんと最後に会ってから、三か月が過ぎていた。
 長い長い三か月の間、たくさんたくさん考えた。大ちゃんはもう私に会いたくないかもしれない。私が不合格になっていることを願っているかもしれない。かもしれないもなにも、連絡が取れなくなったのだからそう考えるのが自然だ。

 滑り止めに受けていた私立も合格したから、私立に入学する選択肢もあった。そうしたらもう二度と会わないかもしれないし、諦められるかもしれない。忘れられるかもしれない。こんな苦しい気持ちから解放されるかもしれない。
 だけど、それよりもずっと、大ちゃんに会いたい気持ちの方が大きかった。
 だから私は、やっと手にした〝同じ高校〟という切符に賭けるしかなかった。

 専門科を受験していた由貴と同じクラスになり、由貴の友達の理緒(りお)麻衣子(まいこ)を紹介された。三人とも私より背が高くて細くて、つい最近まで中学生だったとは思えないほど大人っぽくて、なにより可愛い。
 次の日からはその四人で行動するようになった。

「菜摘、山岸くんに会った?」

 入学して一週間ほど経った日の放課後、帰る準備をしていると由貴が言った。
 念願の同じ高校にいるというのに、私はまだ大ちゃんに会えていなかった。捜してすらいない。会いたいに決まっているけれど、拒絶されたらどうしようという怖さが邪魔をして、会いに行く勇気がなかったのだ。

「ヤマギシくんって?」

 首をひねった理緒と麻衣子に「私の好きな人だよ」と答える。

「えー! 好きな人いるんだ! タメ?」
「ううん、三年」
「そっかあ。うまくいくといいね!」

 お決まりの会話に、苦笑いを浮かべる。

「んー……でもその人、彼女いるから。ただの片想いだよ」
「そっかあ……。でも理緒、見てみたい! 今から捜してみようよ! 何部?」
「えっ?」

 今からはさすがに急すぎる。
 だけど、ありがたい提案でもあった。どっちにしろひとりで会いに行く勇気なんてないのだ。もし冷たい態度を取られても、みんなと一緒なら多少はダメージが浅く済むかもしれない。

「バスケ部だよ」
「バスケ部って部室近かったよね? 行こう!」

 四人で校内を探索する。部室は本当に近かったからすぐに見つかった。中を覗くと、部員らしき人が何人かいるものの、大ちゃんは見当たらない。