一週間後に大ちゃんから【ただいま】とメッセージが来た時、私はちょうどテスト期間中で会うことができず、テストが終わったらすぐに会う約束をした。
 そして迎えた最終日の夜、大ちゃんに早く会いたい一心ですぐに連絡をした。

【テスト終わったよ。いつ遊べる?】

 返事はすぐに来た。
 もしかして私からの連絡を待ってくれていたのだろうか。私に会うことを楽しみにしてくれていたのだろうか。──やっぱり、ほんの少しでも、私に好意を抱いてくれているのだろうか。
 それがただの自惚れでしかないと思い知ったのは、メッセージを開いた瞬間だった。

【ごめん、しばらく遊べないかも】

 画面に表示された文章を見て、心臓がざわついた。

「……え?」

 いくら見たって文章が変化するわけがないのに、硬直したまま一点を見つめ続けた。
 どうして急に、と考えているうちに、ひとつの答えが浮かんだ。しばらく遊べなくなる理由なんて他にいくらでもあるのに、ほぼ確信していた。
 だって、ものすごく嫌な予感がする。

【大ちゃん、もしかして彼女できたの?】
【よくわかったね。うん、できた】

 ──やっぱり。
 出会ってからの数少ない思い出も、これから積み上げていくと思っていた未来も、ガラガラと音を立てて崩れた。

【そうなんだ。いつの間にできたの?】
【修学旅行中に電話で告られて。でも、なんか複雑な関係だよ】

 真っ白になっていた頭の中が、徐々にハテナで埋め尽くされていく。
 複雑な関係ってなに? ねえ、私は? 私のことはなんとも思ってなかったの? だったらどうして思わせぶりなことばっかり言うの? どうして抱きしめたりするの?

 修学旅行明けに連絡を取った時は、そんなこと言っていなかったのに。もっと早く言ってくれたら、テストが終われば会えるなんて、当たり前に会えるなんて、期待せずに済んだのに。こんなに傷つかなくて済んだかもしれないのに。
 どうしてこのタイミングで言うの。

【そっか。じゃあもう会えない?】
【わかんないけど、あんまり会えなくなるかも。嫉妬深いみたいだから】

 お土産くれるって、テストが終わったら遊ぼうって、全部大ちゃんが言ったんじゃん。嘘つき。
 いくら仲よくなったって、中学生なんか相手にされるわけがなかったのかな。ひとりで浮かれていただけだったのかな。

 鼻の奥がつんと痛んで、視界が歪んだ。
 込み上げてくるものをぐっと呑み込んで、大ちゃんとの通話画面を表示した。直接言いたかったけれど、もう会えないのなら今言うしかない。きっと困らせてしまうだろう。わかっていても、どうしても今言いたかった。ちゃんと伝えたかった。
 呼び出し音が鳴る。比例して、私の鼓動も速まっていく。

『もしもし? どうした?』

 どくん、と心臓が跳ねた。

「急にごめんね。えっと、……言いたいことあって」