またね。─もう会えなくても、君との恋を忘れない─



 事のいきさつを説明すると、意外にも人見知りらしい大ちゃんは知らない女の子がいることをかなり嫌がったけれど、なにがなんでも大ちゃんに会いたい私が説得に説得を重ねて、最終的には強引にねじ伏せた。

 そして迎えた金曜日。
 四時間目の英語が終わる頃、制服のポケットに入れているスマホが震えた。先生に見つからないよう机の下でこっそり見ると、大ちゃんからメッセージが届いていた。

【おはよ。今起きた。昨日寝るの遅かったけど、ちゃんと学校行った?】

 大ちゃんとはよくメッセージのやり取りをするようになって、昨日も深夜まで続けていた。
 大ちゃんから連絡をくれたことが嬉しくて、授業中なのについ口許が緩む。それに今起きたということは、起きてすぐ私に連絡してくれたということだ。そんなの嬉しすぎて爆発しそう。
 先生の目を盗んで返信する。

【おはよ。ちゃんと学校来てるけど、大ちゃんが学校行ってないんじゃん。もうお昼だよ?】
【俺は今日休みだもん。創立記念日ってやつ】

 そんな情報聞いてない。
 もっと早く言ってくれたら学校サボったのに!

【そうなんだ。わかったよ】

 学校が休みということは、今は家にいるということで。
 つまり、今からでも遊べるということで。
 チャイムが鳴って先生が教室から出ていったことを確認すると、鞄を持って勢いよく立ち上がった。

「今日はもう帰るね!」
「えっ? なんで?」

 ぽかんとしている伊織に「大ちゃんと遊んでくる!」と叫んで、担任が来ないうちに急いで教室を出た。
 自転車にまたがり、校門を出たところで電話をかける。一秒でも早く声が聞きたくて、会いたくて、スマホを片手に自転車をこいだ。

『……もしもし。どうした?』

 電話に出た大ちゃんの声はものすごく眠そうだった。二度寝していたのだろうか。起こしてしまったことを心の中で謝りつつ、いつもと微妙に違う電話の声にドキドキした。

「学校終わったよ!」
『は? まだ昼じゃん』
「サボって帰ってきちゃった!」
『はあー? そんなに俺に会いたいの?』
「うん!」

 電話の向こうから笑い声が聞こえた。大ちゃんはよく笑う人だ。

『おまえ素直だな。ありがと』
「えへへ、どういたしまして」
『今どこ?』
「まだ学校出たばっかりだけど、とりあえず街の方に向かってた」
『今から行くわ。ちょっとあそこで待ってて。先週行った公園』
「じゃあ由貴に連絡するから、大ちゃんは──」
『あとでいいよ。とりあえずふたりで遊ぼ』
「へ?」

 あとでいいって、ふたりで遊ぼって、なにそれ。そんなの期待しちゃう。
 由貴には悪いけれど、とてつもなく嬉しい。

「うん、待ってるね」

 電話を切って、急いで公園に向かう。駐輪場に自転車を止めて、大ちゃんが見つけやすいように屋根がついているベンチに腰かけた。
 しばらくすると、視界の端に小走りで向かってくる大ちゃんの姿が見えた。初めての私服は、白のTシャツに黒のカーディガンにデニムと至極シンプルなのに、驚異的にかっこいい。

「待たせてごめんね。寒くなかった?」
「大丈夫だよ。早かったね」
「まあタクシーだからね。どこ行く?」