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大ちゃんと遊んだ翌週の月曜日にまずしたことは、伊織と隆志に一部始終を報告すること。私はこれでもかというほど浮かれまくっていた。
「いや……うん。さすがにすごいな。運命ってあるのかも」
腕を組みながら「すごいよな」と繰り返す隆志に、私は勝ち誇るように笑ってみせた。
「連絡先は?」
「交換した!」
大ちゃんからだけど。
「じゃあこれで進路は南高で決まりだな!」
隆志の言う通り、大ちゃんと出会ったことで自然と決まっていた。
将来の夢が見つかったわけじゃない。体験入学の時、学校の方針やらなんやらと体育館で受けた説明の内容は覚えていないし、実習は楽しかったものの進学したい理由にまでなったわけじゃない。
なにもないのに、なにも変わっていないのに。こんな動機で志望校を決めるなんて、みんなに比べたらくだらないし不純かもしれない。
だけど、大ちゃんと同じ高校に行きたい。
「あたし勉強教えるから、頑張ろうね」
「髪も黒くしなきゃな。来週は願書の写真撮るし」
明確な目標ができたことが嬉しくて、大きく頷いた。
さっそく学校帰りに薬局に寄ってヘアカラー剤を買い、家に着くとすぐに髪を染めた。髪を乾かして部屋に戻ると、なんだか勢いがついた私は勉強道具を机に広げた。
無難に数学の教科書を開く。数学なのにどうしてアルファベットや変な記号が混ざっているのかと頭を抱えつつ格闘していると、しばらくしてスマホが鳴った。画面には【由貴】と表示されている。
由貴は同じ小学校出身の友達だ。中学は離れてしまったけれど、仲がよかったから今でもたまに連絡が来る。
「はーい」
『もしもーし。なにしてた?』
「勉強してた」
『勉強!? なんで!? 私立行くなら勉強する必要なくない?』
「公立にした。で、なに? どうしたの?」
『あ、そうそう。菜摘、植木くん知ってるよね?』
植木くんは同じ小・中学校出身で二個上の先輩だ。直接関わりはないけれど、広い学校ではないし植木くんは目立っていたから、存在くらいは知っている。
「知ってるけど、植木くんがどうかした?」
『山岸くんのことも知ってるんだよね?』
「知ってるけど……由貴も知り合いなの?」
由貴の話はこうだった。
この間のカラオケで、大ちゃんと一緒にいたのは植木くんだったらしい(私は大ちゃんに夢中でまったく気付かなかった)。今日たまたま植木くんに会って、その時の話を聞いたとのこと。
『ふたりで遊んだんだって? いい感じなの?』
「遊んだっていうか話したけど、いい感じかはわかんない」
うん、って答えられないのが悲しい。
『そうなんだ。好きなの?』
「うん、好きだよ」
由貴が一方的に大ちゃんのことを知っているだけで、知り合いでもなければ関わりもないらしいから、本人の耳に入る心配はないと踏んでの暴露だ。
『まじ!? じゃあ金曜にでも四人で遊ぼうよ! 山岸くんに訊いてみてくれる?』
「わかったよ」
電話を切るとすぐさま大ちゃんにメッセージを送った。