真実を知ってから数日後。
学校帰りにみんなで寄り道をして、夜に解散してバス停へ向かった。
雪が降っているとつい見上げてしまう。大ちゃんと出会ってから、私はいつの間にかただぼんやりと雪を眺めるのが癖になっていた。きっと、大ちゃんのことを思い出すからだ。
バス停に着いたものの、時刻表を見ると次のバスが来るまでけっこう時間があった。寒さを凌ぐため、さっき通りかかったコンビニに寄ろうと踵を返し、駐車場に着いた時。
駐車場の隅っこに止まった車を見た瞬間、思わず目を見張った。
「……大ちゃん」
運転席のドアが開き、大ちゃんが車を降りた。
見間違えるわけがない。
奇跡だと思った。
この奇跡を無駄にしてしまえば、本当にもう二度と会えない。
足は自然と駆け出していた。
心臓が、破裂しそうなほどに激しく脈打っていた。
──あの……、ヤマギシ……さん。
あの日と、同じように。
「大ちゃん!」
──ああ、思い出した! うまかった子だ!
「……菜摘?」
たった数メートル走っただけなのに、考えられないほど息が上がる。
十二月なのに、雪が降っているのに、全身が熱い。
驚いていた大ちゃんは、やっぱりすぐに笑顔を取り戻した。
「久しぶりだね。……元気してた?」
「うん……久しぶり。元気だったよ」
焼けたように熱い喉のせいか、かすれた声しか出ない。
喉に手を当てて、声を絞り出した。
「……大ちゃん、ちょっと話せない?」
ちゃんと自分から言わなければいけない。
いつだって私は、大ちゃんから言ってくれるのを、来てくれるのを待っていた。
最後くらい、ちゃんと私から伝えなければいけない。
「……うん。仕事までまだ時間あるし、話そっか」
大ちゃんの車に乗る。
隅っこに止めている車の中は、あまり街灯の光が届かず薄暗い。
あの頃と変わらない甘い香りはとても懐かしくて、私の決意を揺らがせた。
自分から呼び止めたくせに、自分から伝えると決心したはずなのに、なかなか思うように言葉が出てこない。永遠に続くんじゃないかと思うほど長い沈黙の中、先に切り出したのは大ちゃんだった。
「ほんと久しぶりだね」
「あ……うん。五か月ぶりだもんね」
「だな」
五か月って長いのかな。短いのかな。
わからないけれど、私にとってはとてつもなく長かった。
「でもやっぱり、おまえ変わんないね。落ち着く」
「大ちゃんも変わらないよ」
あんなにうるさかった心臓が、もう落ち着いている。
大ちゃんは、「そっか」と優しく微笑んだ。
こうして一緒にいるだけで、好きだなあ、と思う。何度も、何度でも。
大ちゃんと会うたびに願っていた。
もう少しだけ。もう少しだけ、一緒にいたい。ずっとずっと、このまま一緒にいられたらいいのに。時間が止まってくれたらいいのにと、何度も何度も、どうしてもそう願ってしまっていた。出会ってからずっと、私はその位置にしかいられなかったから。