スクールゾーンの細い道に交通量は多くない。
僕は左手に写真を持ち、右手のスマホで地図を確認しつつ走りながら、思う。
実はこの写真は合成で、全てはこの和歌子という子が松野と組んだ何かのドッキリで。
でも、わざわざそんな手の込んだ悪戯をする理由なんて、思い付かない。
そんなことを考えながら記憶と地図を頼りに走る。
やがて、
「残り、一分です、結人さん! 急いで!」
と後方を走る和歌子が叫んだ。ほぼ同時に、ずっと遠くに人影が見えた。
学校でよく見なれたブレザーの背中とショートヘアー。松野だ。
松野はそのまま角に消えていった。
「――残り三十秒です!」
角を曲がった瞬間、僕の記憶と目の前の視界とが一致して、慌てて左手の写真を確認する。
その静止画に写っているのと同じように、現実のほうでも点字ブロックが四枚、歩道から剥がれて無くなっている。
コンクリートの亀裂の入り方も一緒だった。
ほんとうに、同じ道が――。まさか……。
僕は前方に写真をかかげ、スマホよりもそちらに注意を向ける。写真の場所と現実とが一致して、写し出されたのと同じ景色が間違い探しのように近づいてくる。
「残り二十秒! 急いでください!」
「松野!」
遠くから叫ぶが、松野は気づかない。カウントする和歌子の声を聞いて、胸がざわめく。
松野の位置を目で計算する。あの歩調だと、ちょうど写真と同じ十字路に――。
「残り十五秒!」
写真の奥に米粒のように見えていた、あの青い乗用車が僕を追い抜いた。車種もナンバーも同じだった。
極めつけは、左奥からかすかに聞こえてくるざわめきと、足元から伝わってくる地面の震えだった。
間違いない、これは――。
僕は左手に写真を持ち、右手のスマホで地図を確認しつつ走りながら、思う。
実はこの写真は合成で、全てはこの和歌子という子が松野と組んだ何かのドッキリで。
でも、わざわざそんな手の込んだ悪戯をする理由なんて、思い付かない。
そんなことを考えながら記憶と地図を頼りに走る。
やがて、
「残り、一分です、結人さん! 急いで!」
と後方を走る和歌子が叫んだ。ほぼ同時に、ずっと遠くに人影が見えた。
学校でよく見なれたブレザーの背中とショートヘアー。松野だ。
松野はそのまま角に消えていった。
「――残り三十秒です!」
角を曲がった瞬間、僕の記憶と目の前の視界とが一致して、慌てて左手の写真を確認する。
その静止画に写っているのと同じように、現実のほうでも点字ブロックが四枚、歩道から剥がれて無くなっている。
コンクリートの亀裂の入り方も一緒だった。
ほんとうに、同じ道が――。まさか……。
僕は前方に写真をかかげ、スマホよりもそちらに注意を向ける。写真の場所と現実とが一致して、写し出されたのと同じ景色が間違い探しのように近づいてくる。
「残り二十秒! 急いでください!」
「松野!」
遠くから叫ぶが、松野は気づかない。カウントする和歌子の声を聞いて、胸がざわめく。
松野の位置を目で計算する。あの歩調だと、ちょうど写真と同じ十字路に――。
「残り十五秒!」
写真の奥に米粒のように見えていた、あの青い乗用車が僕を追い抜いた。車種もナンバーも同じだった。
極めつけは、左奥からかすかに聞こえてくるざわめきと、足元から伝わってくる地面の震えだった。
間違いない、これは――。