翌朝、歌扇野空港のロビー。
 ガラス張りの壁からは、飛び立つ前の飛行機がよく見える。壁の前では、何人かの人がもうすぐ出航する機体を見つめていた。
 バスで市内にある歌扇野空港に着いた僕たちは、人の多さに途方に暮れそうになる。
 未来写真の時間と一致する最初の便が出発するまで、あまり時間がない。
「分かったのは、先生が作ってたのはあのテディベアで間違いないってことだけか」
 孝慈がため息をつく。
 バスに乗る前に、和歌子に先生の動きを聞こうとした。
 昨日学校から追い出された際に、稲田先生の様子をうかがうように頼んでいて、その結果のことでだった。だが、和歌子の答えはあまり芳しくなかった。
『だめでした。先生方の会議が終わるのを聞いていたら、日没になっちゃって追跡終了でした』
『会議はどうだった? 稲田先生の話題が出たとか、そういうのは?』
『それもなしです。ただ、昨日も見たように、先生の鞄から茶色い布と手芸関係のアイテムがのぞいてました』
「すみません、お役に立てず……」和歌子が言う。
「今はとにかく、先生と関係のありそうな人を探そう。もしかしたら僕たちの知り合いかもしれないし」
 それから四人で手分けして空港じゅうを調べることにした。
 ロビーの外を探していると、松野が、すれ違った人のことを吸い込まれるように目で追っているのが見えた。
 どうしたんだろうと、松野に声をかける。
「今の、それっぽい人見つけたの?」
「ううん、そうじゃなくて、あの人の背中のホコリが気になって。写真の先生も、背中にホコリがついてたから」
 松野は遠くに行ったその男性を見てささやく。
「あ……たぶん、ホコリじゃない。ペット飼ってる人なんだ、猫の毛かな?」
「……ん?」
 なにげないその言葉を聞いて、僕は何かに気づいた。思わず聞き返す。
「――もう一回言ってみて」
「? ……猫の毛が、服についていて、だから、ペット飼ってる人なのかな、と」
「――わかったぞ」
「え?」