後ろについていた和歌子はぎょっとする。
 まさか、ばれました? 今は見えないはずなんだけど――。
 結人はそのまま二秒ほど和歌子がいるほうを見つめた。
 視線は――外れている。
 結人が見ているのはレジのようだった。
 和歌子は視線につられて振り向く。
 レジでは、つややかな黒髪をしたショートヘアーの女の子が本を袋に詰めていた。
 あれは、同じ高校の女の子?
 もしかしてあの方が、松野って人?
 一瞬顔をあげた松野と思わしき女子生徒。彼女の視線は結人を向いているように見えた。
 思い出した。彼女の下の名前は、瑞夏だった。
 彼らの目が合ったその時、結人から発せられる幸運のチカラの密度が急激に高まった。
 目が合ったのに気づいた女子生徒は、奥から出てきた男の人とレジを交代すると、結人のほうに歩いてきた。
 結人を見ると、予想外の行動だったのかかなり驚いている。
 松野はそのまま立ち止まり、モジモジと何か言おうとする。何やら大事な話があるようだ。
――お、これはもしや!?
 和歌子は今までに放課後の校舎で何度も、飽きるほど見てきたシーンを思い出して二人の前に身を乗り出した。
 愛の告白というやつですか!?
 現場に居合わせること自体は珍しいわけじゃないけど、学校以外で見るのは初めてです!
 ひとり盛り上がる和歌子を置いて、結人のチカラは見る見る間に高まっていく。
 和歌子にだけ見えるまぶしい光が結人の全身を包んだ。