俺はこれで良かったんだろうか。いや、今更振り返っても遅い。これで良かった。絶対にそうだ。
 遺し忘れた遺書のような時間だった。伝えたかった事は全て伝えられた筈だ。
 彼は優しくて強くて、俺が思っていたより脆い人間だった。俺に全てを曝け出した彼は、この先どう生きて行くのだろうか。
 分からないが、きっと良いものになる筈だ。そうなれば良い。
 これは俺にとって紛う事なき青春だ。いや、夏だから青夏(せいか)としよう。

 カメレオンの背中を追って、俺は青夏に擬態した。
 

 
 あれから一夜が経った。驚く程良く眠れた。
 楽しかった。懐かしかった。良かった。そんな言葉が渦を巻く。それと同時に産まれたのは、寂しいだった。
 昨日の写真を見る。しっかりと残っている彼が居た証。落書きだらけだが、ずっと残しておかなければいけない。
 航太との、落書きのような記憶も全て大切なものだ。
 これから先、僕は走らなくてはいけない。届け、感情に素直になる。彼からの呪いだから。
 そして誓う。
 
 精一杯生きると、カメレオンの彼に約束を。


fine.