その後、帰ってからも少し遊ぼうと言う事になった。何をするかは決まっていない為、取り敢えず袋井まで行く事にする。
「テレポート機能とか備わってないの?」
「一人用だね」
「なんだよ」
「今使えねぇって思っただろ」
「いや別に」
 人通りの少ない道でそんな会話をする。傍から見たら僕はヤバいやつ。そんな自覚を持って辺りを警戒していた。
「動きうるさいな。そんな警戒する必要無いだろ」
「いや君は良くても僕は駄目なんですー」
 多少ウザイと思う程に口を尖らせた。
「てか何する?」
「ねー。……あ、メロン公園とか行こうよ」
「何そのチョイス」
「良いじゃーん行こーよー」
 子供のように駄々をこねてみる。すると、「はいはい分かりました」と多少不服そうに言われた。
 人通りが多い道の手前で止まる。
「雑に着いてくわ」
「はーい。じゃまた後で」
 彼はスっと消えた。
 人々の中を行き、駅構内へ入る。やはりここも人が多く居た。子供も大人も、年配の方も旅行客も。目的は違えどここに集い動き回る人々。そこに幽霊なんて居なかった。
 改札を通り、ホームへ立つ。黄色いフィルターが掛かったような風景。『はままつ』の文字が書かれた駅名標も、屋根の隙間から覗く入道雲と空も。全てがくすんだ黄色に染まっていた。
 何となく写真を撮る。端末上で見るとよりフィルターが掛かっているようだった。
 十分弱待ってから来た電車に乗り込む。既に乗客はいっぱいだ。ドア近くに立つ事にする。
「ドアが閉まります」
 そんなアナウンスの後、ガタガタとドアが閉まった。
 色褪せた座席と変色したつり革、古い車両だ。これは揺れるな。そう確信する。案の定、発車はもちろん停車も走行中もこれでもかと言う程に揺れた。
「次は袋井。袋井です」
 そんなアナウンスが入るまで、僕は航太との記憶を泳いでいた。水族館、動物園、花鳥園、海、川、遊園地など色々な場所へ行った。
 沢山ある彼との記憶。全てを事細かに思い出し、口にする事は出来ないが、ちゃんとした宝ものである。
「ドアが開きます」
 目の前のドアがまたガタガタと音を立て開いて行く。開き切った所で足を踏み出した。
 浜松駅よりも少し簡素なホーム。そこに人がなだれ込む。ここは他の駅に比べて何故か降車率が高いのだ。
 人に揉まれながらエスカレータを上がる。改札を通って、北口へ出た。居酒屋やカラオケ、銀行があるこちら側は確かに少々賑わっている。気がする。
 銀行の方向へ歩き出した。そちら側が今回の目的地方面だ。あと数時間。どう過ごそうか。