橋本さんの衝撃的な告白から数日後。


ようやく私の心の中で気持ちの整理がつき始めた。


最初は苦しくて仕方なかったけど橋本さんの性格からして私が何を言っても無駄だろう、と思ったら少し気持ちが楽になった。


もう死を覚悟しているのに私のわがままで困らせたくない。そういう風に考えることまでできるようになったのは、橋本さんの振る舞いのおかげだろうか。



「蛍ちゃん、ちょっとお使い頼まれてくれる?」


「はーい」



ぼーっと窓の外を見ているとサチヨさんに名前を呼ばれてはっと我に返る。


いけないいけない。


今はお仕事中だった。



「ごめんね、このお薬を倉木さんの所へ届けてくれないかしら。今日診察の予定だったんだけど来なくてね。塗り薬の処方だけ先にしておこうと思って」


「はい、わかりました」



私はサチヨさんから巾着を受け取り、靴を履く。


確か倉木さんの家は……こっちだったな。