ーミーンミンミンミン……。
夏の暑い日差しが照りつける中、セミの鳴き声が耳をつんざくように大合唱をしている。額から流れる汗をそのまま流しながら、私はそっと下を見下ろした。
見下ろしたその先にはミニカーのように見える車、まるで私が巨人になったように感じる。
だけどそんなことを考えるのも、夏の暑さを感じるのも、セミの鳴き声がうるさいと感じることもしなかった。
頭の中にあるのは、ただ“死”という文字だけ。
心にぽっかりと空いた穴を埋めるように次は空を見上げる。雲ひとつない晴れ渡った青空。
ようやく、私は……解放されるんだ。
この苦しい世界から。
誰からも必要とされない、この世界から。
もう少しで私はあの青空の中へ飛び立つ。
「……ははっ」
自然と、乾いた笑いがこぼれる。本当、くだらない人生だったなぁ。なんで、私はこの世界に生まれたんだろう。