10-2


 宇宙人よりも、未来人よりも、私はまずはじめに超能力者だと自称する人物のところへ向かった。何だか記憶があべこべになっている気がするが、おそらく気のせいだろう。謎や不可思議を解明するのが我が秘密結社同好会の目的であり、存在理由である。他の不可思議が気になる方はそちらの活躍も見ると、この不可思議への理解が深まるかもしれない。……他の不可思議?




 ※ ※ ※





「愚かですね! 我々能力者に生身で立ち向かうからですよ! さあ、終わりにしてしまいましょう!」


 くそぅ。


「我々能力者の能力は異世界から異世界への空間移動。それは凡人には見えなくなるも同然であり、つまり透明人間を相手にしているようなもの。夢野(なにがし)の武器召喚には驚きましたが、結局はただの大剣。鉄の塊にすぎない」


 くそっ、くそぅ。


「異世界空間を自由に行来可能な能力者数百人を相手にするからですよ! 同性愛など、そんなものを認めるのが悪い」



 くそっ、くそっ、くそぅ。


「そんなものは性の別れた貴様らにお似合いの低俗な思考だ! 両性具有たる私こそ人間の中の人間を超えし者……!! 人知を超越したる存在っ……!!! ふははははっっ!!!!!」



 くそっ、くそっ、くそっ、くそう……。



 選択を間違えたのだ。選択肢を間違えたのだ。あのとき宇宙人か未来人を選ぶべきだった。超能力者だけはだめだった。失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた。しくじったしくじったしくじったしくじったしくじったしくじったしくじったしくじったしくじった。くそっ、くそう……。


「ヘイ様っ!」

「……! ユメ!」

「まだ諦めてはなりません……まだ可能性は残されています。他の選択肢を、他の可能性を……」


 日本刀がユメの体を貫通した。


 一本。


 二本。


 ……三本、四本、五本……。


 だめだった。見ていられなかった。私へ投げられた刀をすべてその身で受け止め、私へ危害がないように。たとえその命に代えても。


「……お怪我は、ありませんか……?」


 この選択肢を選んだ自分をひどく叱責する。ひどく責追する。


「ごめん。ごめんよ、ユメ」

 
 必死に抱きしめる。ああ、傷口が、ああ、夢が。夢野根底が。
 

 その時、光が私を包み始めた。


 この結果を無駄にはしない。


 私は仮タイムトラベルを終え、元世界線の現世へと戻っていった。