繰り返し、繰り返す。


 何度だって繰り返す。同じように見えて、わずかにズレた世界。そう。これは違う世界。繰り返し繰り返して世界線を少しずつづらしていけば、やがて大きな世界線移動になる。まったく異なる可能性が生まれる。それに賭けるしかない。


「愚かね、地球の生命体は」


 これで99879546320回目。

 エデン・レイ。彼女の言葉を聞いた回数だ。


「姫様! 早く撤退を! お下がりください、危険です!」

「……ヨウヘイ」

「はい、姫様。ここです。私はここにいます」


 硝煙や鉄の焦げる匂いも既に感じなくなり、敵も味方も判別がつかなくなってきた。五感を犠牲にして使う奥義もすでに五発放っている。おかげで最後の視力も尽きてきたようで、辺りが薄暗い。声も出ているか怪しい。聴力も僅かだ。
 

「……ごめんね」
 
「ーーっ……! 姫様。丈夫ですよ。私がここにいますから」

「……分かった。あとはよろしくね」

「はい……。姫様」
 
「これで頼りのお姫様がお眠りね」

「……エデン・レイ……!」

「ヘイ様! 下がって」


 宙から無動作で放たれた爆撃を(すんで)のところで夢野に助けられた。シールドを張って防いだようだ。

「ありがとう。夢野、姫様を」 

「……御意に」


 冷たくなった身体を夢野に託し、すぐに下がっていく彼女を見送った。


「この地球(ほし)も、もう終わりね」

「そりゃ、あれだけ核撃ったしな。当然だろ。おかげでさっきから地響きと熱がすごい」

「他はほとんど死んだぞ。おまえはよく生きているな」

「まあね。色々とバフ掛けてもらってるから。……二人のお姫様に」


 背の二倍もの刀身のある刀を召喚、抜刀。これも夢野の能力の一つ。彼女の恩恵だ。思いが詰まっている。感情の一撃にしてやる。


「人間甘く見るなよ……。最低でも道連れにする……!」

「良かろう。来るが良い」


  武器の刀身は電子的な青白い光を帯び始め、それを地に叩きつけて勢いつけて宙へ飛翔。空浮かぶ一人の少女へ向かっていく。会敵したその刹那の光が、二人の姿を消し去った。跡には爆音と爆風のみが残った。


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