「じゃあ分かった。観てて無理になったらおまえは俺のポップコーンを食べろ」
「え、なんで?」
「で、自分にこう言い聞かせる。自分は今、俺とポップコーンを食べにここへ来ている」
「は?」
「外は暑いけどここなら涼しくて座り心地の良い席まで用意されている。どっかのカフェにでも入ったような気持ちで意味の無い時間をやり過ごせ。その内映画の展開が変わってまた意識が切り替わるかもしれないだろ?」
「…………」
「おまえは映画を観に来たんじゃなくて俺と遊びに来たって言ってた。だったらそういう事にすれば良いじゃん」
「…………」
予約した通りの席に着いて、俺はポップコーンとジュースを所定の位置にセットした。スクリーンにはもうすぐ公開予定の映画の宣伝が流れている。
「……マジか」
「?」
暫く黙っていた橘がポツリと呟いたのでそっちを見ると、昨日と同じくキラリと光らせた目でこっちを見る奴と目が合った。
「結城君すごっ、そんなん考えた事も無かった」
「おー」
「試してみる! 今回それでやってみるわ」
「あー、うん。まぁ、そうして」
そして、場内がもう一段階暗くなるとアニメの主人公が現れて、そこから物語が始まった。
その作品のファンでも無い限りこの年になって映画館でわざわざ観る事も無いような懐かしい気持ちになる映画だったけど、俺は結構そういうのが好きで、やっぱりいくつになっても世界に飛び込んでしまうくらい魅力的で面白かった。
そんな中、スッと伸びて来た手が俺のポップコーンを攫っていく。集中して観ていたのですっかり忘れていたと、ハッとして隣の橘を見る。奴の言う意味の無い時間とかいうのがやって来たのだと思ったからだ。
けれど、そこにあったのはスクリーンに釘付けの橘の横顔だった。しっかり観入ってるし、しっかりポップコーンも食べている。鷲掴みにした分を一気にほうばってもぐもぐしてるのが可笑しくて、やれやれと呆れつつも微笑ましく感じる気持ちで俺もまたスクリーンに目を戻したのだった。
「マジで良かった。感動した。何? なんで大人これ観にこないの? あの感動子供にも分かんの?」
こんなん心の英才教育じゃん、とかなんとか言いながら、橘はさっきドリンクバーで入れて来たコーラを一気飲みした。ポップコーンだけ食べていたからすっかり口がパサパサになったらしく、そのままファミレスに入る事にしたのである。
「え、なんで?」
「で、自分にこう言い聞かせる。自分は今、俺とポップコーンを食べにここへ来ている」
「は?」
「外は暑いけどここなら涼しくて座り心地の良い席まで用意されている。どっかのカフェにでも入ったような気持ちで意味の無い時間をやり過ごせ。その内映画の展開が変わってまた意識が切り替わるかもしれないだろ?」
「…………」
「おまえは映画を観に来たんじゃなくて俺と遊びに来たって言ってた。だったらそういう事にすれば良いじゃん」
「…………」
予約した通りの席に着いて、俺はポップコーンとジュースを所定の位置にセットした。スクリーンにはもうすぐ公開予定の映画の宣伝が流れている。
「……マジか」
「?」
暫く黙っていた橘がポツリと呟いたのでそっちを見ると、昨日と同じくキラリと光らせた目でこっちを見る奴と目が合った。
「結城君すごっ、そんなん考えた事も無かった」
「おー」
「試してみる! 今回それでやってみるわ」
「あー、うん。まぁ、そうして」
そして、場内がもう一段階暗くなるとアニメの主人公が現れて、そこから物語が始まった。
その作品のファンでも無い限りこの年になって映画館でわざわざ観る事も無いような懐かしい気持ちになる映画だったけど、俺は結構そういうのが好きで、やっぱりいくつになっても世界に飛び込んでしまうくらい魅力的で面白かった。
そんな中、スッと伸びて来た手が俺のポップコーンを攫っていく。集中して観ていたのですっかり忘れていたと、ハッとして隣の橘を見る。奴の言う意味の無い時間とかいうのがやって来たのだと思ったからだ。
けれど、そこにあったのはスクリーンに釘付けの橘の横顔だった。しっかり観入ってるし、しっかりポップコーンも食べている。鷲掴みにした分を一気にほうばってもぐもぐしてるのが可笑しくて、やれやれと呆れつつも微笑ましく感じる気持ちで俺もまたスクリーンに目を戻したのだった。
「マジで良かった。感動した。何? なんで大人これ観にこないの? あの感動子供にも分かんの?」
こんなん心の英才教育じゃん、とかなんとか言いながら、橘はさっきドリンクバーで入れて来たコーラを一気飲みした。ポップコーンだけ食べていたからすっかり口がパサパサになったらしく、そのままファミレスに入る事にしたのである。