『結城君へ
 お元気ですか。オレは元気です。オレの事覚えてますか? 急に学校やめたから、結城君は驚いたと思います。ごめんね。でも結城君には言えなかったんだ。だって結城君はオレが学校やめたら寂しいって言ってくれたから、そんな結城君に当たり前の顔して相談なんて出来なかった。それにやめない方が良いって言ってくれたのに、それでもオレはやめちゃったから。だからやめた後も連絡出来ませんでした。嫌われるのが怖かったので。結城君はいつも芯のある考え方をするから、きっとやめた事を怒られるだろうなと思ったんだ。改めてごめん。怒らないで下さい。

 今俺は、学校やめて働いてます。色々です、色々。色んな事をしてます。バイトしてから、働いてお金稼いで、学校とは違う人との繋がり方を知って、なんか、オレにはこっちの方が向いてるなと感じてしまって。学校で勉強したって仕事は出来るし、そっちの方が良いのかもしれないけど、なんかもう居ても立っても居られなくなってた。高校卒業の資格なら定時でも通信でも手に入るって分かったら、今やりたい事ガンガンやりたいなって思ってしまって自分が抑えられませんでした。結果、今は前より充実しています。毎日新しくて忙しいです。

 でも、そんな中いつも心に残ってる事があります。それは結城君の事です。どんなに楽しくても忙しくても疲れてても、いつも結城君は何してるかなと頭を過ります。いつか結城君とまた会って話したいなと。自分で連絡絶っておいて都合の良い話ですが、結局今回このように手紙を書いてしまいました。その方が本気に取ってもらえるかなと思ったからです。オレは本気です。結城君の言葉がいつもオレ変えてくれたから、オレにとって結城君は特別です。

 “意味は無駄な昨日から生まれて、それを今日のオレが明日に変える” シンプルで当たり前なのにそれが一番やっていきたいと思える生き方で、オレにはピッタリな考え方でした。そんな生き方をしている結城君をオレは尊敬したし、結城君のような人に会えたから高校も行って良かったなって思います。だから一つ、オレには後悔があります。

 寂しいって言ってくれた結城君に、一緒にやめる?と聞いてしまった事。これはねぇなと今でもすごく後悔しています。こんな事言わなければ良かったし、言う必要も無かった。だってみんな自分の人生を生きてるんだから、一緒にっていう言葉はダサすぎる。確かバイトの時も誘ってる。オレは結城君を前にするとダサくなってしまいます。でも結城君はかっこいいです。結城君は結城君の毎日を生きていて、そんな結城君はいつもかっこいい。オレは大好きです。だから一緒に居たいならオレが高校をやめなければ良いだけなんだけど、オレは自分勝手なので自分のやりたい気持ちを抑えられませんでした。そして嫌われたくもありませんでした。なので今、色々自分が落ち着いたのでようやく次の明日へ向かう為に結城君に手紙を書いているという事です。

 オレは元気です。結城君は? もし良かったら会いたいので連絡下さい。待ってます』