「正直、功一に引かれると思ってた。どっちかっていうと理解ある寄りの親なのに、勝手にふてくされて卒業式ボイコットするの、ふざけんなって思わなかった? 俺、別に殴られてねえし」
「いや、大切なもの捨てられたら怒って当然じゃない? あと、お父さんひどいね。僕は志月の絵好きだからね」
功一が俺の頭を撫でた。
「何だよ、いきなり」
「辛いとき姉ちゃんがよくこうしてくれてたから。志月、辛かったよね。志月に元気出して欲しいな」
功一の手がひたすらに温かかった。気を抜くと泣いてしまいそうだったので、軽口を叩いてごまかした。
「羨ましすぎる。姉ちゃんをくれよ」
「志月は紳士じゃ無いから大事な姉ちゃんはあげられませーん。それに姉ちゃん彼氏いるよ。僕が代わりに慰めてあげるから僕で我慢して」
「仕方ねえな、妥協する。……嘘、ありがとな」
 強がりきれないし、照れ隠しもしきれなかった。功一はあまりに優しすぎる。西日がバカみたいに眩しくて、直視したら絶対に涙が出ると思って明後日の方向に顔を向けた。
「死体埋めて寝て起きたら忘れて欲しいんだけどさ、俺お前と友達になれてよかった。お前だけはずっと変わらないでいてくれたら良いなって思う」
「無理。手遅れだよ」
すべてを諦めたように功一は遠い目をした。
「僕も、殺したんだ」