「……え、今回もですか? 今回は大切なお客様ですし、嫡女である綾様が香元を務めるのがいいんじゃないでしょうか」


 長宗我部家当主様からの手紙が来た翌日。私は、綾様に呼び出されて彼女の部屋にいた。そこで話が上がったのは、私にいつものように香元を代わりにしてほしいということだった。


「私に口答えする気? 下賤な娼婦の娘が」



 機嫌が悪いのか彼女に平手打ちで殴られてしまったのですぐに頭を下げる。

「……っすみません」


 母は娼婦ではないし、下賤でもない自分だけなら無視することができるがお母さんのことを言われたら黙っていられない。それにお母さんを貶めるような言葉を聞きたくなくて深々とお辞儀をし謝る。