「ついあんなこと言っちゃったけど、無理です! お鈴はお嬢さまと離れるなんてできませんっ! 結婚しても、歳を取っても、ずっとお嬢さまのそばにいますっ!!」

 暇を出すと言ったのが相当衝撃だったのか、千切れんばかりに首を振った絃に苦しいほど抱きしめられる。

「お嬢さまの専属侍女はお鈴の天職なんですからぁ!!」

「そ、そうなのね。……もう、お鈴ったら」

 あまりの勢いで宣言され、絃は気圧されながらもつい笑ってしまった。

(改めて考えてみたら、これはお鈴とはじめての喧嘩だったのかもしれないわね)

 どんなときも絃を受け入れ、肯定し、一緒にいてくれたから。
 絃を、愛してくれていたから。

(わたしも、これからはちゃんと受け入れて返していかなくちゃ)

 何倍も、何十倍も、胸に溢れるだけの愛を伝えていきたい。
 せっかく、今をこうして、生きているのだから。

「あのね、お鈴」

「はいっ」

 あれだけ喉に引っかかって出てこなかった言葉も、今ならきっと心から言える。


「──大好き」