餌付けしてないし、戯れてるだけだしセーフでしょ。と、あっけらかんと言う永島さん。クラスのなかで理にかなった意見を唱えていた副会長とは、まるで別人のように適当だ。
 ……いやいや、それよりも。私は彼女の言動を脳内でプレイバックする。

「もしかして、教室に居づらい……?とか?」

 訊ねると、綺麗な横顔が縦に頷く。同時に「にゃあ」と顔を出したざらめは、狭い隙間に収まっていたとは思えないほどタプンとしていた。

「元から今のクラスにうまく馴染めなくてさ。あ、一年のときは仲良い子は居たんだけどねー……クラスが変わったら、その場その場で仲良くする(・・)人も変わっていくみたい。私にはそれが出来なかった」

 意外だった。でも確かに、もう半年以上同じクラスにいるはずなのに、永島さんと仲の良い人と言われてもあまり浮かばない。

「意外?」
「え?」
「そーゆー顔してるよ」

 私の表情を読んだ彼女は、ふふっ、と笑って壁際に背を凭れる。隅っこには埃が溜まっているのに、気に留める様子はない。美人なのに、こういう無頓着なところも意外だった。

「生徒会に入ったのも、クラスにいる時間を減らすためだし」
「えっ、そんな不純な理由で?」
「言うね~。でもそう、おっしゃる通り。あと、生徒会権限で部屋貸し切れちゃったりするし」

 ここみたいにね、としたり顔。ざらめも似たような顔をしていた。

「意外と適当なんだ」
「そうだよ。適当だし、こうやって逃げる場所は必須だし。その方がクラスの皆も陰口言いやすいでしょ。遠山さんは混ざんなかったんだ」

 あっけらかんと話すけど、まるで誰が陰口を叩いているのか知っているような口ぶりに、少しばつが悪くなる。私は思いきって唇を割った。

「混ざりたくない、って思ったから」