わかば公園のベンチに並んで座って、周囲に怪しい人がいないことを確認して、私は写真を見せた。「なんやこれ」と旭は驚愕の顔をする。
 この差出人不明のメールのおかげで私が誤解を深くしたことを知ると、旭は大きなため息をついた。
「そんなんもっと早く言ってくれればよかったやん」
「ごめん……言い出せなかった」
 旭と小夏ちゃんの仲を疑ってしまえば、なかなか問い質せなかった。謝りつつ、これまでのことを全て説明する。旭の噂が流されたことや、写真が送られたこと、大地くんを好きな小夏ちゃんが私を妬んでいたこと。そして、崎本という西ノ浦の男子が怪しいということを一つ一つ語った。それでも、私が嫉妬の念を持っていたことは流石に言えなかったけど。
「崎本か……」
「知ってる? その男の子」
「クラスが違うからよう知らんけど。ほんでも体育が合同やから顔と名前ぐらいはわかる。全然目立たんやつやで」
「私にメールを送ったのは、その人かな」
「可能性は高いやろうけど……絶対とは言えんよな」
「返信してみようか」
 小夏ちゃんや旭を味方につけて、私は少し気が大きくなる。だけど旭は「やめとけ」と言った。
「こんなんどうせ捨てアドや、繋がらんやろ。繋がったとしても、向こうの都合が悪くなればすぐ切れる」
 私が手にしているスマホの画面を指さした。そこには相手のメールアドレスがある。意味のなさそうな文字列に、いくらでも量産できるフリーメールのドメイン。確かに、わざわざ返信しても収穫はなさそうだ。
「でも、ほんまに崎本が関わっとったとして、なんであいつがそんなことするんや」
「そう、それなの。旭も関係ない人なんでしょ」
「恨みは買ってないと思うけどな。まず話したこともあらへん。向こうが俺のこと知っとっても不思議やないけど、やからってこんなことする意味がわからん」
 旭の言う通り、私も小夏ちゃんも、動機に関しては首を傾げるばかりだった。
「俺と梓が離れるように仕向けて、なんの得があるっちゅうんや」
 私も気付いていた。誰かが私たちを離れさせようとしている。旭の悪い噂を流して、私を諦めさせようとしたのが始まり。でも諦めなかったから、小夏ちゃんをけしかけて写真を撮って送る。彼女の立場を利用して私を追いつめて、旭から離す。
 目的は既に明確なのに、そんなことをして誰にどんなメリットがあるんだろう。
「とにかく、崎本が絡んでるんは間違いないやろ。……連絡先わからへんけど、何とか見つけるわ」
「ううん、それはいい。こっちに任せて」
 この場は私、ではなく小夏ちゃんの威厳を借りることにする。彼女の真似をして、私は自分の胸元をとんとんと叩いてみせた。