「だいたい、どんな顔してグラウンドに立ってろって言うんだ……」


やっぱり、輝先輩だけが私の共感者のように思えた。


私だって、元チームメイトたちが泳いでいる傍で、どんな顔をしてプールサイドに立っていればいいのかなんてわからない。


苦しくて、羨ましくて、悲しくて、憎くて……。想像するだけでもそんな感情が込み上げてくるのは目に見えているのだから、実際はもっとつらいだろう。
もしかしたら、泣いてしまうかもしれない。


マネージャーを勧めてきた人たちには、きっと悪気はない。
だけど、本当に余計なお世話でしかなかった。


そして、それをわかり合えるのは、輝先輩と私だけだろう。


「暑いな……。こういう日の練習は地獄だったな」

「私も……」

「水の中で練習してるのに?」

「筋トレとか走り込みは陸の上だからね」

「ああ、そっか」

(不思議……)


今はまだ、水泳のことを話すだけでも泣きたくなるのに……。彼とだけは、こうして会話をしていても涙は出てこなかった。


その理由は、やっぱり輝先輩だけが私の気持ちをわかってくれているからに他ならないのだろう。
ただ、今の私には理由なんてどうでもよくて、彼がタイミングよく現れてくれたという事実が心を救ってくれるようだった。