「いいよ、もう……」


精一杯の優しさのつもりだった。
こう言うだけで限界だったのに……。


「でも、あんなこと言うなんて……。美波はもう泳げないって、未恵にはちゃんと話しておいたのに……」


彼女の言葉が、さらに私を追い詰めた。


「ッ……!」


現実はもう嫌というほどにわかっている。
それでも、他人の口から紡がれると、心は簡単にえぐられる。


ましてや、その相手は元チームメイト。
もう泳げない私の気持ちなんて絶対にわからない人間に、怒りや憎しみがない交ぜになったどす黒い感情が押し寄せてくる。


傷つけたいわけじゃないのに、頭の中にはひどい言葉ばかりが浮かび始めた。


「でもさ……うちら、チームメイトだったんだし、美波さえよければいつでも顔出してよ。みんなも喜ぶと思うし」

(やめて……)

「マネージャーとかコーチの補佐っていう手もあると思うんだ。だから――」

「っ――」


偽善かと思うほどの千夏の態度に、とうとう耐え切れなくなった刹那。

「美波?」

彼女に対して叫び出しそうだった私は、自分を呼ぶ優しい声にハッと我に返った。