電車の中には、同じ学校の生徒の姿があった。
なんとなく輝先輩には近づけなくて、彼も私の方には来ようとしない。


お互い、視線を交わすことはあっても、一定の距離を保っていた。


【次で降りる】


再び送られてきたラインには、そう書かれていた。


次は私の家の最寄り駅で、輝先輩があんな質問をしてきた意味を察する。
彼に続いて電車から降りると、改札口を出たところでようやく合流した。


「……わざと、だよね?」

「人の目が怖い気持ちなら、俺もわかるからな」


輝先輩の声音は静かで悲しげで、それでいて言葉には重みがあった。
彼の過去の栄光と選手生命を絶たれてからの経緯を想像すれば、どんな思いをしてきたのかはすぐにわかる。


だって、きっと私と同じだったと思うから。
今の輝先輩からはそんな雰囲気は見えないけれど、彼が私に共感した時の表情はそう語っていた。


「美波、このへんでおすすめの店はある?」

「え?」

「ほら、昨日なんか奢るって約束しただろ」

「そんなのいいよ……」

「遠慮するな。なんでも好きなものリクエストしろよ。カフェくらいあるだろ?」


突然そんなことを言われると、困ってしまう。