「これからはこうやって買い食いしようよ! 私、中学の時からずっと、美波とこんな風に寄り道とかしてみたかったんだ」

「うん……」


私の放課後には、もう予定がない。
部活に注いでいたすべての時間を持て余している今、ごく普通に誘ってくれる真菜の優しさが心に沁みた。


感じているのは、まだ素直な喜びだけじゃないけれど……。それでも、ひとりぼっちでいるよりはこんな風に遊んでくれる相手がいる方がいいと思う。


無理にでも笑っている間は、水泳への未練や未恵から言われた言葉をどうにか心の奥に押し込めていられるから……。


「これ食べたらさー、とりあえずカラオケ行くでしょ? 次はアイスも食べに行きたいね! あと、フラペチーノと~」

「そんなに?」

「今日じゃなくて今度ってことね! 美波と行きたいお店、いっぱいあるんだもん」

「真菜と遊んでたら太りそうなんだけど」

「そしたら、ふたりでダイエットする?」

「クレープ食べながらする話じゃないね」


真菜と顔を見合わせて、クスクスと笑う。


(大丈夫……。ちゃんと笑える)


彼女といれば、嫌なことはあまり思い出さなくて済む。
退部届を出した日のことも昨日のことも言えなかったけれど、今はこうして笑っていられる時間が私を救ってくれるようだった。