放課後に遊びに行く友人たちが羨ましかった。
スイーツや肉まんを買い食いする高校生の姿を見るたび、羨ましかった。


それでも、遊びに行くよりも練習に励み、食べたいものを食べるよりも食事をコントロールする生活を選んできたのは、水泳選手として実績を残したかったから。
ほんの少しの気の緩みが大きな後悔に繋がらないように、練習も食生活も決して妥協しなかった。


何年も何年も、そんな生活を送ってきた。
すべては、インターハイでの優勝とオリンピックを目指して……。


「俺たちみたいにそうやって生きてきた人間は、ある日突然『はいどうぞ』って自由時間を与えられてもどうすればいいのかわからないんだよ」


輝先輩の言葉ひとつひとつが、私の心の内を吐き出してくれているようだった。
選手生命を絶たれたあの日から、こんなにも私に共感してくれた人はいなかった。


苦しいのに嬉しくて、悲しいのに心はほんの少しだけ救われた気がして……。

「……ッ、ふっ……っ」

泣きたくないのに、とうとう涙が零れ落ちた。


「涙も……もう出ないって思うほど散々泣いたはずなのに、不思議なくらい出るんだよな」


それは独り言だったのかもしれない。
だけど、私には彼が共感してくれたようにしか思えなかった。