私の気持ちとは裏腹に、放課後はいつにも増して早く訪れた気がした。


真菜は心配そうにしつつも、『明日のクレープとカラオケ、忘れないでよ!』と笑顔で送り出してくれた。
不安で逃げ出したくてたまらない私には、彼女の普段通りの態度が嬉しかった。


教室からプールまでは、およそ五分。
古谷先生の計らいで、今日はコーチが少しだけ早く来てくれるのだとか。


昼休みにそれを伝えられた時、ほんのわずかながらもホッとした。
だって、それなら部員たちが着替えている間にコーチと話し、さっさと帰ってしまえると思ったから。


それを叶えるためにも、足早にプールに向かう。
部員たちに合わないことを祈りつつ、プールサイドに行った。


「美波」

「コーチ……こんにちは」

「久しぶりだね。……けがの具合はどう?」


コーチは眉を下げながらも、世間話をするようにけがのことに触れてきた。
いつもと変わらない様子で話すことがーチの優しさだとわかる反面、胸の奥がジクジクと疼く。


「リハビリは一応終わりました……。日常生活ならあまり困ってません」


答えながら、泣きそうになる。