程なくして、輝先輩が根負けしたように口を開いた。


「……美波が部員と話してるところを見た時だよ」

「えっと、それって……」

「『私が一番負けたくないのは、自分だから』って話してた時」

「そんなに前から?」


目を真ん丸にした私に、彼が心底悔しそうにする。


「あー、もう! だから言いたくなかったんだよ! 美波に声をかける前からずっと片想いしてたなんて……」


意外な事実に驚く私に反して、輝先輩は頬を赤く染めている。
それが夕日のせいじゃないことはすぐにわかった。


(もしかして、一緒にいてすごくドキドキしてるのって、私だけじゃないのかな?)


そう思った瞬間、自然と頬が綻んでいた。


「笑うなよな。これでも、俺は真剣に――」

「先輩、大好き」


対面に座っていた彼に、ギュッと抱き着く。
すると、輝先輩が一瞬固まった。


「……バカ」


小さく零した彼は、私の体をそっと離してから真っ直ぐな視線を向けてきた。


「俺の方がもっと好きだと思うけど」


照れくさそうに想いを紡いだ輝先輩が、とても愛おしい。
ずっとずっと、彼と一緒にいたい。


素直な気持ちを心の中で願った時、恋心がまた大きくなった気がした。