この春が終わる頃、私は目標を見つけた。
栄養士になって、いつかカフェを開きたい――という夢だ。


選手として生活していた頃は、体調に気を遣い、食べるものに関してもしっかりと管理していた。
それは時に、つらい練習以上にストレスになっていたかもしれない。


だから、私みたいにスポーツに励む選手たちが気兼ねなく好きなものを食べられるような、そういうカフェを開きたい。
できるかどうかはわからないけれど、ようやく将来の目標が見つかったのだ。


「卵焼きは、まだ失敗するけどね」

「失敗は成功の基、ってな。最初から速く走れる奴なんていないし、綺麗に泳げる奴もいない。練習を重ねてタイムが伸びていくんだ。料理だって同じだろ」

「うん」


そんな私の夢を、輝先輩は応援してくれている。


理学療法士と栄養士。
道は違うけれど、自分たちの経験から得て見つけた目標なのは同じ。


今は、お互いにお互いを応援していた。


「今度はハンバーグが食べたいな」

「それはまだダメ」

「なんで?」

「この間、失敗したの。なんかボロボロになった」

「ははっ。いいよ、失敗しても、美波が作ってくれるならちゃんと食べるよ」

「……成功したら作る」


にこにこと笑う彼に、胸の奥が甘い音を立てる。
照れ隠しに唇を尖らせれば、楽しそうな笑い声が返ってきた。