開園後は、ふたりで足早に入場した。


去年と同じ順番で回ろうと話していたのに、ふたりしてちゃんと覚えていなかった。
それがおかしくて、冗談交じりに責任転嫁し合っては何度も笑った。


「そろそろなんか食う? 朝早かったし、腹減ったよな」

「あのさっ……! 私、お弁当作ってきたんだけど……!」

「え?」

「あんまり上手くないかもだけど、味は普通だと思うから!」

「マジ? 嬉しい。美波の手作り、初めてじゃん」


満面に笑みを湛えた彼を見て、急に不安が押し寄せてくる。
この日のために何度も試作はしたけれど、本当に大丈夫かな……とドキドキしてきた。


そんな私を、輝先輩は館内に促す。
フードコートと同じエリアには、持込み用の飲食物が食べられるスペースがあって、そこでランチを摂ることにした。


「食っていい?」


私が使い捨てのランチボックスを差し出すと、受け取った彼の目が輝いた。
緊張しながらも頷き、輝先輩の様子を静かに窺う。