「それから、悩みながらも色々調べて、スポーツに関係する仕事がしたいって思った。実際にできるかはわからないけど、ほんの少しでもいいから自分が好きだったことに関わっていたいって」


私はもう、水泳に関わることは見たくないと思っていた。
だけど、まったく逆のことを言う輝先輩の気持ちは、少しだけわかる気がした。


「もう関わりたくないって思ってたのに、やっぱり好きだって気づいたからさ」


だって、彼が陸上を好きだったように、私も水泳が本当に好きだったから。


「うん……」

「将来は、理学療法士になりたいって思ってる」


初めて聞いた輝先輩の夢。
それを語る彼の目には、戸惑いも迷いもない。


「まずは理学療法士になって、スポーツに強い病院に就職して、俺みたいにけがなんかで苦しんでる人を治す手助けがしたい」


自分の中の苦しみや歯がゆさを昇華し、前を向いている。


「一番つらいのは本人だし、頑張らなきゃいけないのも本人だけど……。それでも、俺のリハビリをしてくれた理学療法士みたいにできることはあると思うんだ」


その姿は、とても眩しかった。


「私が言うのも変だけど、きっと輝先輩ならできるよ……」


私の中にある不安や焦燥感はまだ消えていないけれど、零れた言葉も素直な気持ちだった。