「別に仲がいいわけでも、それまで接点があったわけでもないのに、それから美波のことが気になるようになってさ。って言っても、別に恋愛感情とかじゃなくて……。でも、なんて言うんだろうな……」


彼自身も、自分が抱いていた感覚に明確な理由は見出せていないみたいだった。
それでも、「とにかく気になったんだ」と小さく笑った。


「おかしな話なんだけどさ、それから何度か試合を観に行ったんだ。あと、たまに練習を見てたこともあるな」

「そうなの?」

「あ、練習を見てたのはさすがに数分とかだぞ? 男子部員もいるから普通に見る分には怪しまれないとは思うけど、プールって部員以外の人間がいたら目立つだろ? でも、外からでもちょっとだけ見えるから、足が向いた時に見たりしてさ」


輝先輩の話を聞けば聞くほど、驚くことばかりだった。
だって、彼はずっと私を見ていた……ということなんだから。


「それで……美波がけがする少し前だったんだけど、たまたま美波が部員と話してるところに遭遇したんだ。たぶん、その時の美波はスランプだったんだと思う。『なんでそんなに頑張れるの?』って訊かれてた」


そう前置きされた直後、いつだったか千夏と話した内容を思い出した。