「一年で準優勝なんて、成績としては悪くない。むしろ、誰からも褒められるくらいだ。なのに、美波は心底悔しそうに泣いてた」


誰もいないであろう会場の一角で堪え切れなくなって、悔しさを吐き出した。


一位の選手は私の一学年上で、中学時代にも周囲からライバル扱いされていた。
だからこそ、彼女に〇,〇三秒差で負けたことがどうしようもないほど悔しかった。
準優勝という好成績を素直に喜べなかったくらいに……。


当時の私はスランプ気味で、その少し前から思うようにタイムが出せなかった。
あの頃は練習に行くのが心底嫌なほど苦しくて、インターハイ目前はプレッシャーに押しつぶされそうだった。
眠れなかった夜も、胃やお腹が痛くなって嘔吐したこともある。


「なんだか俺を見てるみたいだと思った」


輝先輩なら、そういう経験をしたことがあるに違いない。
きっと、自分と私の姿が重なったんだろう。


「だからかな。余計にムカついたんだ。俺はもう選手としては走れないかもしれないんだから、次のチャンスがあるお前は幸せだろって……正直、そう思った」


胸の奥が痛む。
だけど、それは彼の言葉そのものではなく、自分も身に覚えがあったから。