「手術もリハビリも失敗したわけじゃない。でも、成長期のタイミングで同じ場所を二回手術するのって、選手としては致命的だったんだと思う。まともにトレーニングができてなかったのもあって、前みたいに走れなくなった」


もう選手として泳げない……とわかったあの日の気持ちが、鮮明に蘇ってくる。
目の前が真っ暗になって、息の仕方も忘れたほど苦しくてたまらなかった。


「で、もう諦めようと思った。可能性はゼロじゃなかったんだろうけど、マイナスから再スタートできるほど希望は持てなかったから……」


相槌を打つことも忘れていた私は、ただ輝先輩を見つめていた。
傷ついた過去の彼を思えば、胸の奥が痛い。


「俺さ、リハビリしてる時、何度も心が折れかけたんだ。痛いし、思うように動かないし……でも、周りはどんどんタイムを伸ばして結果を出していくし……」


不安と苛立ち、そして焦り。
その渦中にいた輝先輩の気持ちは、たぶん私も知っている。
まったく同じじゃなくても、きっとそれらを味わったことがある。


「前みたいに動かない足にも、自分の環境にも苛立って……。部員を見るだけでも心がざわついて……。毎日苦しいのに、そういう弱音を吐く場所がなかった。顧問もコーチも『待ってるから頑張れよ』って言うだけで……どんどん追い詰められた」