その夜、何度も輝先輩からかかってきた電話には一切出なかった。
ラインは未読のまま、スマホを放置した。


今はなにを言われても、きっと納得なんてできない。
ふたりでいた時間が全部うそだった気すらして、彼の本心がどこにあるのかわからなかったから……。


眠ってしまえばこの苦しさからいっときでも離れられると思ったのに、こんな時に限って睡魔はやってこない。
こんなに枕を濡らすほど泣いたのは、たぶん選手生命が絶たれたとわかった時以来。
あんなに苦しかった日々と同じくらい、胸の奥がズキズキと痛んでいた。


「うそつき……」


きっと、うそをついたわけじゃない。


「黙ってたなんて最低……」


言えなかっただけだとわかっている。


「バカ……」


それでも、輝先輩に真実を隠されていたことが悲しくてたまらなかった。


「置いてきぼりにしないでよ……」


ぽつりと零れた声が、深夜の静寂の中に溶けていく。


自分自身の中にあった焦燥感がいっそう強くなって、なにもかもが怖くて不安で仕方がない。
そう感じた時、ハッとした。