「美波! そうじゃない!」

「じゃあ、なに!? だったら、どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」

「だから、それは……言おうとはしてたんだ」


さっきの話を聞けば、彼が悩んでいたのはわかる。
そして、私を傷つけたくなくて言えなかったんだ……ということも。


だけど、今はそれを素直に受け止められない。


「っ……」


唇を噛みしめるのが一瞬遅れたせいで、あっという間に込み上げてきた涙が頬を伝った。


「美波……」

「触らないで……」


伸びてきた手を、反射的に払いのけてしまう。
ぶつかった手が痛くて、余計に泣きたくなった。


「どうして……」


ずっと、輝先輩は一番の理解者だと思っていた。
居場所がなかった学校で、彼だけが私の痛みをわかってくれていると思っていた。


似たような理由で傷つき、過去から立ち直れていない。
自分の生活のすべてとも言えるほどのものを失い、進むべき道がわからなくなる。
同じ絶望を味わったもの同士、私たちは同じ痛みを抱えている。


そんな風に思っていたのに……。

「先輩はもう、私なんかよりずっと前を歩いてたんだね……」

裏切られたような気持ちにさえなってしまう。